研究概要 |
本研究の目的は,東北大学とマサチューセッツ工科大学における電子散乱によって,原子核反応に対する相対論的効果を実験的に研究することである.平成15年5月に東北大学での実験が実施されることになったので,平成14年度は,精力をそれに集中させることにした.また,イタリアの理論研究者の協力により相対論的な計算も可能になったので,以前のデータと比較検討した. 平成11年に,炭素-12を標的として東北大学で行った(e,e'p)反応断面積を,相対論的理論と比較し,以下の結果を得た. 1.低ミッシング運動量領域で,直接反応の理論値が,実験データより約2倍大きい.この傾向は,(γ,p)反応と同様である. 2.断面積の理論値は一体流演算子の取り方に依存して数十%変化する.この値は準弾性(e,e'p)実験より大きく,(γ,p)反応より小さい. 3.中間子交換流の寄与は,ミッシング運動量の大きな領域で顕著で,断面積は約2倍になる. 4.中間子交換流の寄与を入れて相対論的に計算した断面積に0.5を掛けると,全ミッシング運動量領域にわたって,計算値は実験値をよく再現する. 平成15年5月に予定している実験の準備を行った. 1.半導体検出器の数を増やして効率的にデータを取ることが出来るようにした.科学研究費では,それに必要な高圧電源を購入した. 2.40チャンネルの前置増幅器を新設した.この増幅器は以前のものに比べてノイズが小さく,さらに10倍の増幅器を内蔵してあるので,後段の増幅器を使わなくてすむようになる.
|