研究概要 |
本研究の目的は,東北大学とマサチューセッツ工科大学における電子散乱によって,原子核反応に対する相対論的効果を実験的に研究することである.平成15年度には以下のような研究を行った. 1.東北大学において,酸素-16を標的とした(e,e'p)実験を行い,実験結果を相対論的理論計算と比較した.実験から得られた断面積は,理論の約半分であった.これは,以前行った炭素-12の場合と同様の結果で,理論に不十分な部分のあることを示唆している.また,断面積のミッシングエネルギー依存性は,中間子交換電流を考慮した理論計算に近い傾きを示し,ミッシングエネルギーの大きな領域で中間子交換電流の寄与が大きなことを示している。この研究で,大学院学生が修士号を取得した. 2.フランスのグルノーブルで開催された国際会議で,「低移行運動量領域における^<12>C(e,e'p)実験」の発表を行った. 3.グルノーブルの会議の後,共同研究を行っているイタリアのパビア大学を訪問し,我々が行っている実験に対して理論面からの検討を行うとともに,セミナーにおいて我々が東北大学で行っている研究について紹介した. 4.アメリカのマサチューセッツ工科大学で行った陽子を標的とした中性パイ中間子発生電子散乱実験の論文を出版した.この研究は,デルタ共鳴の四重極成分の強度を測定し,陽子の変形について調べるものである.実験から得られた縦波型-横波型干渉項の実数部分と虚数部分をさまざまな理論と比較した結果,マインツ・ユニタリー模型が唯一実験と合うことが分かった.しかし,この模型には問題があることが知られているので,完全な理解を得るためには更なる研究が必要である.
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