研究概要 |
本研究の目的は,東北大学とマサチューセッツ工科大学,ジェファーソン研究所における電子散乱によって,原子核反応に対する相対論的効果や中間子交換電流の寄与を実験的に研究することである.平成16年度には以下のような研究を行った. 1.東北大学において,カルシウム-40を標的とした(e, e'p)実験を行い,実験結果を相対論的理論計算と比較した.実験から得られた断面積は,理論の約半分であった.これは,以前行った炭素-12や酸素-16の場合と同様の結果で,理論に不十分な部分のあることを示唆している.中間子交換電流の寄与は,炭素-12や酸素-16に比べて小さい. 2.昨年度行った酸素-16の実験結果を核理研研究報告(Research Report of Laboratory of Nuclear Science)に発表した.実験から得られた断面積は,理論の約半分であり,また,ミッシング運動量の大きな領域で中間子交換電流の寄与が大きなことを示している. 3.アメリカのマサチューセッツ工科大学で行った陽子を標的とした中性パイ中間子発生電子散乱実験の論文を出版した.この研究は,デルタ共鳴の四重極成分の強度を測定し,陽子の変形について調べるものである.実験から得られた四重極成分はクォーク模型の予想より大きく,パイ中間子の雲の寄与が大きいことを示している. 4.アメリカのジェファーソン研究所で行ったヘリウム-3を標的とした(e, e'p)pn反応の論文を出版した.結果は,ヘリウム-3のような軽い原子核の大運動量核子の場合でも終状態相互作用の寄与が大きなことを示している.3体崩壊の場合は,2体崩壊の場合よりも終状態相互作用の寄与が大きく,得に大運動量陽子(大ミッシング運動量)の場合に顕著である.
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