研究概要 |
約10TeV以下のエネルギーの宇宙線が、超新星残骸中で衝撃波加速により生成されていることが、最近の解像型空気チェレンコフ望遠鏡(IACT)によるTeVガンマ線の観測から直接的に証明された。しかしこれらの宇宙線が加速領域から、どのように銀河全体に伝播し、どのように分布しているかは全く解明されていない。我々人間は、銀河内から観測せざるを得ないために、現在のIACTによる観測から、TeVガンマ線のdiffuse成分を検出することが困難であるからである。本研究は、我が銀河に似た系外銀河NGC 253の観測によって、TeV領域宇宙線の銀河スケールでの分布を解明することを目的とした。NGC 253は、距離が2.5Mpcと比較的近くにあるスターバースト銀河であり、超新星発生頻度が我が銀河より数十倍も高く、10 kpcにも拡がった電波ハローを持つことで知られた銀河である。CANGAROO II 10m解像型望遠鏡による、ON, OFFそれぞれ約75時間の観測データを解析し、11標準偏差の統計的有意度でTeVガンマ線放射を検出した。これは、通常銀河からのTeVガンマ線放射の初の検出となった画期的な成果である。またさらに、放射領域が、可視光で見た銀河の大きさよりも拡がっており、現在までに観測された最大のガンマ線放射領域、すなわちガンマ線ハローを発見した。さらにこのTeVガンマ線の放射は、電子による宇宙背景放射の逆コンプトン散乱によるものであることをつきとめた。これらの成果は、二つの論文(Astron. Astrophys. 396, L1-L4, 2002, Astrophys.J. 584, L65-L68, 2003)として発表された。
|