研究概要 |
1 明白にローレンツ共変なヤン・ミルズ理論の定式化において,以前提唱した,BRSTおよび反BRST不変な質量次元2の複合演算子のくりこみを議論した。この研究の興味は,問題としている複合演算子の真空凝縮が,質量ギャップとクォーク閉じ込めの起源になりうるという主張に起因している。(1)ヤン・ミルズ理論においてくりこみ群の流れを求めた。(2)複合演算子の乗法的くりこみ可能性と,くりこみの後でも複合演算子の不変性が保たれることを示した。(3)グルーオンどゴーストの伝播関数に対して演算子積を実行し,質量次元2の真空凝縮に対応するウイルソン係数を求めた。これらの結果と以前の結果の関係,その物理的意味を論じた。 2 ヤン・ミルズ理論において,グルーオンとゴーストの伝播関数に対する連立Schwinger-Dyson方程式の漸近解を求めるための新しいアンザッツを提唱した。これによって,紫外と赤外領域の両方の漸近解を同時に論じることができ,なぜ,冪的解および対数関数的解が,赤外および紫外領域でのみ可能なのかを理解できる。対数的補正があるか否かに拘わらず,赤外極限では,グルーオン伝播関数は抑制され,ゴースト伝播関数は特異になり,グルーオン・ゴースト・反ゴースト相互作用に対する結合定数は,赤外安定固定点を持つ。この結果は,九後・小嶋のカラー閉じ込め条件やGribov-Zwanzigerの閉じ込めのシナリオと無矛盾であることを示した。 3 ヤン・ミルズ理論におけるグルーオンとゴーストの伝播関数に対する連立Schwinger-Dyson方程式の紫外漸近解において,1/p2の冪的補正が無矛盾解として許されることを示した。この結果は,最近,演算子積展開と格子シュミレーションによって示唆されている,質量次元2をもつ新しい型の真空凝縮の存在を支持する。この漸近解を演算子積展開の結果と比較した。
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