研究概要 |
漸近的自由性を持つYang-Mills理論では,カラー磁場の自発的生成を伴う真空が摂動的真空より低いエネルギー密度を与えることが,1977年にSavvidyによって発見されたが,直ちにNielsenとOlesenにより,タキオンモードが存在して同真空を不安定にすることが示された。その回避策として真空に有限の大きさのドメイン構造を導入して,タキオンモードを避けるコペンハーゲン真空が提唱された。 しかし,クォーク閉じ込めの双対超伝導描像との整合性からは,グルーオンが十分大きな動力学的質量を獲得することで,タキオンモードを消滅し,Savvidy真空の安定性が回復,それと同時にアーベリアンドミナンスやモノポールドミナンスが導出されることを指摘した。 我々は,Cho-Faddeev-Niemi(CFN)分解を用いて,モノポールを含む位相的配位を非可換ゲージ場から非線形変数変換として直接抽出することで,Savvidy真空の自発磁場を単なる一定外揚としてでなくモノポール凝縮と直接的関連を持つ磁気凝縮として微視的見地から理論的にも初めて導出した。実際Cho-Faddeev-Niemiの変数変換を用いて,必要な質量生成が起こることを示した。 双対超伝導描像を裏付ける現象として数値計算により発見されたアーベリアンドミナンスとモノポールドミナンスが,モノポール自由度による磁気凝縮により獲得された非対角グルーオンの動力学的質量の帰結として理論的に理解することに初めて成功した。ここで提唱されたモノポールを含む位相的配位に起因する新しい型の磁気的真空凝縮<B,^2>も次元2のグルーオンの真空凝縮であり,従来の研究との密接な関係が判明した。
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