本研究では、一般相対論的な高速回転星のr-モード振動を、重力場の変動を無視する近似つまりカウリング近似によって解析する定式化を完成させ、それに従った数値計算コードを開発し、いくつかの代表的な状態の回転星のr-モードを求めることに成功した。一般相対論における数値計算コードが正しく動いていることは、次の2つのチェックによって確かめた。一つは、ニュートン重力での計算結果と比較することで、弱い重力の範囲で同じ結果を与えることを確認すること、二つ目は、遅い回転をしている一般相対論的な回転星のr-モード振動の計算結果との比較を行い、同じ結果が得られることをチェックすることである。どちらの比較も極めてよい一致を示したため、計算コードには問題のないことが確かめられた。 この計算コードを使って、N=0.5とN=1.0の一様回転するポリトロープについて、重力の強さとして球対称での重力質量と半径の比がM/R=0.1と0.2の場合、球対称から始め、赤道からガスが流出する直前までの平衡状態系列の回転星のr-モード振動の振動数と固有関数を求めた。ここで摂動は回転方向の波数が2で、バロトロピックなもののみを考えている。その結果、慣性系から測定した振動数と回転速度の比は、平衡状態系列のほぼすべてに関して・ポリトロープ指数に依存しないことが明らかになった。これは、ニュートン重力でのr-モードの振る舞いと同じである。一方、重力の強さは振動数と角速度の比に大きく影響を及ぼす。このことは遅い回転での計算から知られていたが、カウリング近似の範囲では、回転の度合いによらないで一様に変化すること、言い換えると、振動数と回転速度の比(σ/Ω)は、回転エネルギーと重力エネルギーの比(T/W)に対して、σ/Ω=a-b T/|W|という1次の関係を持ち、定数aとbが重力の強さに依存して圧縮性にほとんどよらないことを示すことができた。ちなみに、M/R=0・1のとき、a=1.4でb=1.9となり、M/R=0.2のときa=1.5でb=1.2〜1.3である。こうしてr-モードが一般相対論的高速回転星でも存在することは、高速回転している中性子星の回転周期に上限をもたらす可能性が残っていることになる。
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