超対称性理論では100GeV程度の質量を持つ新しい粒子の存在がが数多く予言されている。そのような粒子の中には重力のみでしか他の粒子と相互作用しないために宇宙論的な寿命を持つものが存在する。そのような粒子に対してその質量・寿命・存在量に対する制限を求めた。特に長寿命を持つ不安定粒子が崩壊してハドロンを放出する場合に、ハドロンが宇宙のバックグランド・プラズマとの間の強い相互作用・電磁相互作用によって引き起こすハドロン・シャワー過程を定量的に評価しそれが宇宙初期の元素合成に与える影響を計算した。その結果、不安定粒子のハドロン崩壊は従来考えられてきた放射崩壊(光子を放出する崩壊)に比較してより厳しい制限を導くことが分かった。さらに、この結果を超対称性理論で予言されるグラビティーノに応用した。グラビティーノはインフレーション宇宙においては再加熱時に密度が再加熱温度に比例して作られる。したがって、グラビティーノの存在量に対する制限から宇宙の再加熱温度に対する制限が導かれる。このようにして求めた再加熱温度の制限は10の6-7乗GeVで極めて厳しい制限となり、宇宙の物質・反物質の非対称性の起源の説明にとっても重要な結果となった。
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