超対称性理論では重力を媒介するグラビトンのスパー・パートナーであるグラビティーノが存在し、宇宙論特に、宇宙初期の軽元素合成に影響を当てるためその存在量は厳しく制限される。インフレーション宇宙ではグラビティーノはインフレーション後の再加熱時にその再加熱温度に比例して作られる。したがって、超対称性に基づく宇宙モデルにおいては「熱い」宇宙の始まりの温度は低いことが要求される。また、超対称性理論で予言される粒子の中には。グラビティーノのと同じように長寿命を持ち、その崩壊が大量のエントロピーを生成し、宇宙を再加熱する場合があり、その温度はMeV程度が予想される。このように低い再加熱温度の宇宙でも、ほとんどの粒子はすぐに熱化され、標準宇宙モデルで期待される熱平衡状態にある。しかし、ニュートリノはその相互作用が小さいために容易には熱化されず、その存在量・エネルギー分布が標準の場合と異なり、そのため、宇宙初期の元素合成に深刻な影響を与える。そこで、再加熱温度がMeVスケールの宇宙でニュートリノの熱平衡化過程を詳しく調べることにとって、再加熱温度の下限を求めた。制限を求める際、従来考慮されていなかったニュートリノ振動がこの熱平衡化過程に重要な働きをすることがわかり、ニュートリノの存在量が減っても元素合成で生成されるヘリウムの量は減少せず、むしろ増大することが分かった。このため再加熱温度の制限は約2MeVと厳しくなった。
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