本年度の研究実績の概要は以下のようである。 1.幾つかのα粒子からなる系が閾値近傍において、凝縮状態になる可能性があるということの妥当性を微視的模型で検討した。昨年度、α粒子を点粒子として扱う計算を行い、s-軌道に凝縮している割合は必ずしも大きくないことを示したが、微視的計算ではパウリ効果のため、3α系(^<12>C)の7MeVの励起エネルギーにある0^+状態の凝縮度は70%程度と大きくなることがわかった。また、凝縮状態における粒子相関は、主にペア相関の和で表現されることを明らかにした。 2.ハロー原子核におけるハロー中性子の相関を直接みることができるような実験は少ないが、ハロー中性子の分解反応の大きさを調べることによつて間接的にみることができると考えられる。この考えに基づいて、^6He+^<12>C弾性散乱において、^6He内の2中性子が連続状態に励起する過程をアイコナール近似で評価し、breakupによる偏極ポテンシャルを導いた。また、その入射エネルギー依存性を検討した。核子当り40MeVの弾性散乱の微分断面積の実験データの解析から、偏極ポテンシャルの重要性を指摘することができた。 3.強い斥力を含む核力を直接用いた核構造理論を展開するために、Jastrow相関関数と模型関数との積で波動関数を表現する考えが有力であり、しばしば用いられている。Transcorrelated法を用いて、模型関数の従う方程式の性質及びJastrow相関子の選び方について検討した。非エルミートハミルトニアンを含む固有値問題を如何に解くか課題が多いが、将来性はあると思われるので、更に継続して取り組みたい。
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