研究成果を研究の柱ごとにまとめる。 不安定原子核における多粒子相関の研究 炭素16の励起状態から基底状態への電気四重極遷移確率がなぜ強く抑制されるかについて、14C+n+nの三体模型によって研究した。中性子間の相関を十分に考慮し、現実的核力に基づいた計算から、抑制の機構に対するスピン三重項の役割と抑制の度合いを明らかにした。15Cのデータと矛盾なく抑制を理解するためには、この模型の仮定である14Cの閉殻構造を少し崩す必要があることが示唆した。 不安定核における反応機構の研究 芯核と1核子からなる原子核にたいする弾性散乱や分解反応断面積を計算する汎用プログラムを開発した。これにより、実験データの解析が便利に行われるようになった。さらに、標的核が鉛原子核のように電荷が大きくクーロン分解が主要になる場合にも、アイコナール近似が適用できるようにクーロン励起の摂動理論を参考にしながら拡張し、実際に1中性子ハロー核に有効であることを示した。モンテカルロ積分法を活用すれば、多粒子相関を含む高精度の波動関数を用いてグラウバー理論の多重散乱振幅を近似なしに計算できることを示し、高エネルギー散乱の理論について今後の分析に道を拓いた。 軽いハイパー核の束縛機構とバリオン間相互作用に関する研究 A=3-5のAハイパー核の結合エネルギーに関する長年の課題を、ΛΣ結合を含むさまざまな相互作用を用いて分析した。粒子相関を十分に考慮した計算により、テンソル力の作用で結合エネルギーの謎が解決されることを示した。粒子数の多い系には、クォーク模型によって得られた相互作用をクラスター模型に適用する理論を展開し、^9_ΛBe、^6_<ΛΛ>Heに応用した。
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