1.座標空間表示Hartree-Fock-Bogoliubovによる連続状態線形応答理論(以下cHFB線形応答理論)により、中性子過剰酸素同位体の双極子励起の構造を詳細に分析した。特に、ドリップライン近傍核の特徴であるソフトダイポールモードと中性子対相関との関連を分析し、(1)ソフトダイポール領域の双極子強度の大小は中性子対相関に強く支配されていること、(2)核内部での対相関よりも核表面低密度領域での対相関が重要な役割を果たしていること、(3)表面型の対相関の場合には、核表面で2中性子間の近接空間的な対相関(ダイニュートロン的相関)が基底状態に強く現れること、(4)ソフトダイポール励起では、このダイニュートロン的相関をもった中性子がコアに対して運動していること、などを明らかにした。このような特徴が多数のバレンス中性子を持つ中性子過剰酸素同位体でも成立することを明らかにしたのは初めてである。なお、このような分析において、(5)2次元グラフィックス表示した2体相関密度がcHFB理論でのダイニュートロン相関を視覚化するうえで極めて優れた情報を与えること、(6)ソフトダイポール励起の構造を明らかにするには、従来使われてきた遷移密度だけでなく、対密度に対する遷移密度の情報が極めて有効であることもあわせて明らかにした。 2.より現実的なSkyrme型相互作用を採用してのセルフコンシステントなcHFB線形応答理論模型の構築に着手した。その第一段階として、基底状態をセルフコンシステントに記述する数値計算プログラムをコーディングした。引き続きコーディングの改良を行っている。この段階では予備的な数値計算結果であるが、これを利用して、われわれのcHFB線形応答理論の後で独立に提案された別グループの線形応答理論と比較し、われわれの模型では考慮される粒子放出幅に関して、競合理論では問題が生じていることを明らかにした。
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