超弦理論の低エネルギー領域の有効理論として得られることが期待される超対称模型の構造や性質について、純理論的な研究とは相補的な観点に基づき現象論的特性を中心に様々な側面から検討を行った。本研究において得られた主たる成果の概要は、以下の通りである。 1.ゲージ相互作用により超対称性の破れが媒介される模型において、2重項と3重項分離問題として知られる問題を回避する対称性を導入し、ゲージフェルミオンの質量の普遍性を破る模型をSU(5)の枠組において構成した。超対称粒子の質量スペクトル構造を解析し、この場合に得られる超対称粒子のスペクトル構造はμ問題の解決に有利な働きをすることを示した。 2.ゲージフェルミオン部分のCP位相の電気双極子能率への寄与は他の位相からの寄与とうまく相殺する可能性を持つことを、中性子、電子及び水銀の電気双極子能率を評価することで示し、超対称性の破れパラメータ領域について検討した。大きなCP位相が存在する場合に、Higgs粒子の質量が軽くなる可能性についても考察した。 3.グラビティーノ問題を回避しつつレプトジェネシスを可能とするニュートリノ質量模型の構成した。ニュートリノ振動実験からの要請を満たしつつ、CP非対称性を最大化する模型を作ることによって、十分なレプトジェネシスを引き起こすのに必要な再加熱温度をグラビティーノ問題を回避できる程度にまで引き下げることができることを示した。 4.μ問題に関わる平坦なポテンシャルを持つスカラー場をもとに、バリオン数非対称や暗黒物質を説明する具体的模型を構成した。さらに暗黒エネルギーとの関連についても検討を行った。
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