弦理論を構成的に定式化し、非摂動効果を分析することによって、いろいろな物理量が少なくとも原理的には可能な数値計算によって求まるようにすること、すなわちtheory of everythingの構築を目的として研究を進めた。具体的には、 1.当研究代表者らによって提案されたIIB行列模型を数値的・解析的両面から分析し、時空の次元を始め、ゲージ群や物質場の構造など、現実の世界が弦理論によってどのように記述されうるかを調べた。 2.曲がった時空が、どのように行列模型で表現されるかを調べ、重力の持つ基本的な対称性である、一般座標変換不変性、局所ローレンツ対称性がどのようにして、行列模型のユニタリ対称性の中に埋め込まれているかを示した。この結果、HB行列模型の経路積分の中には10次元以下のすべての多様体が含まれており、きまったトポロジーを持つ時空上の計量だけではなく、すべての可能なトポロジーを持つ時空を力学的に記述していることがわかった。 3.以上の結果を超重力の場合に拡張し、超重力の対称性まで明白に含んだ新しいタイプのモデルを提案し、その性質を調べた。このモデルが、もとのIIB行列模型と等価であるかどうか現在解析中である。 4.平均場近似を系統的に改良していく方法による高次の計算を行い、IIB行列模型の基底状態として4次元の時空がもっともらしいことを示した。 以上の結果を総合し、弦理論の基礎となるべき対称性その他の原理を見抜き、最終的な弦理論の構成に迫ろうとしている。
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