1 格子色力学の計算に関して:量子色力学(QCD)における有限温度における実時間スペクトル関数を、チャーム・反チャームクォーク対のベクトル(J/ψ)、軸性ベクトル(η_c)の2つのチャンネルに対してユークリッド格子上で測定された相関関数から我々のグループによって理論的に整備された最大エントロピー法を用いて構成した。その結果、J/ψ粒子、η_c粒子共、QCD相転移温度よりも十分高い温度、1.6T_c程度までは存在し続けること、そして、1.6T_c程度と1.7T_c程度の間というごく狭い温度領域の間で共に消滅するということを示した。このことは、クォークグルーオンプラズマの生成の徴候の代表格であるJ/ψ抑制の意味について疑問を投げかけるものである。 2 Disoriented Chiral Condensate (DCC)生成の問題について:超相対論的原子核衝突において期待されるような非一様な量子場の非定常的な時間発展を記述することが出来る、スクイズド状態をモデル空間とする時間依存変分原理に基づく理論形式を、初めてO(4)シグマ模型におけるDCC生成の問題に適用した。その結果、運動量空間、およびアイソスピン空間における非対角相関は、共に座標空間におけるドメインの生成を促進する方向に働くことを見出した。さらに、運動量空間における非対角相関は量子揺らぎを増加させるが、アイソスピン空間における非対角相関にはそのような働きはないことを示した。現在、これらの観測量への影響について研究を進めている。
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