超対称粒子からなる暗黒物質の密度はその相互作用を決定することによって決まるため、LHCなどの将来の加速器実験において実際に超対称模型のパラメータをどの程度決定できるかを明らかにする研究を行った。LHC実験においては、スカラークオークやグルイーノなどカラーをもった超対称粒子が主に生成され、その崩壊の最終段階において暗黒物質であるLSPが生成される。LSPは荷電中性であり、また宇宙年齢程度に安定であるため、直接その運動量を測定することができない。しかし、ジェットやレプトンの運動量分布を調べることで、崩壊過程に現れる超対称粒子の質量を決定したり、荷電非対称性から、その粒子のスピンや偏極を決定できることを明らかにした。特にスカラートップ、スカラーボトムの崩壊については詳細な研究を行った。またこれらの研究をもとに、定量的に暗黒物質密度を決定できるか検討をおこなった。 グラビテーノからなる粒子が暗黒物質である場合についても研究を行った。この場合はもっとも近い質量をもつ超対称粒子(NLSP)が準安定になる。NLSPの候補となるのは、ニュートラリーノや、スカラータウであるが、コライダーによってNLSPのグラビティーノへの崩壊を明らかにする手法について議論した。また特にLHCのCMS測定器のそばにあらたに10Ktクラスの測定器を追加することによって、スカラータウを固定し、数ヶ月までの長寿命のスカラータウの崩壊分布を精密に測定することができることをあきらかにした。 暗黒物質は、我々の銀河内に比較的高密度に分布している。この暗黒物質は対消滅したり、測定器と散乱するのでこれをもとに、暗黒物質を観測できると考えられている。W粒子やHiggs粒子の超対称粒子であるウィーノや、ヒグシーノが、ニュートラリーノの主な成分となっている場合について議論した。この時、NLSPの質量はLSPと縮退しており、LSPどうしがW粒子を交換してNLSPにかわる過程をくりかえすことによって銀河内での対消滅確率が増大する現象がありうることを明らかにした。
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