二次元ホール電子系で位相的(トポロジカル)なスピン励起(スキルミオン)が観測されていることに見るように、低次元電子系はゲージ理論の格好な実用の場となっている。このような状況を踏まえて、平成15年度にはゲージ理論の枠組と手法を駆使して、分数量子ホール効果の多様な側面を研究するとともに、新しい題目として位相的な励起と超対称性の興味深いかかわりあいにも研究を広げた。 1.研究代表者は既にW_∞ゲージ理論の枠組とボゾン化の手法を組み合わせて、非圧縮性状態の電磁応答から分数量子ホール効果の長波長実効理論を構築するアプローチを開発し、一層および二層ホール系に適用してきた。これらの考察を通して、量子ホール系に単一モード近似を適用すると一般に複合ボゾン理論(の変形版)が得られることに気づいた。そこで今年度はこの点を吟味し、単一モード近似とW_∞代数の非線型表現を組み合わせると(電磁応答を経ずに)微視的理論から直接に、量子ホール系の素励起及び集団励起を統一的に記述する実効理論が導出できることを示した。 2.目下、この枠組を拡張してエッジ(端)状態の記述を試みている。近年実験理論両面から強い関心のもたれている(異方的な)ストライプ状態の考察を目指したい。 3.ソリトンやドメイン・ウォールなど位相的な励起が現れる超対称理論では超対称代数(の位相荷など)に量子異常が生じうることが知られている。新種の量子異常であり、計算上微妙な点もあって、近年少なからぬ関心が向けられている。このような位相荷の量子異常を超場で書かれた超カレントを用いた明白に超対称な枠組の中で定式化し、その起源と役割を考察した。
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