二次元ホール電子系で位相的(トポロジカル)なスピン励起(スキルミオン)が観測されていることに見るように、低次元電子系はゲージ理論の格好な実用の場となっている。このような状況を踏まえて平成16年度にはゲージ理論の枠組と手法を駆使して分数量子ホール効果の多様な側面を研究するとともに、新しい題目として位相的な励起と超対称性の興味深いかかわりあいに関する研究を併行して行った。 1.研究代表者は非圧縮性状態の電磁応答から分数量子ホール効果の長波長実効理論を構築するアプローチを開発し、一層および二層ホール系に適用してきた。特に、昨年度には単一モード近似とW_∞代数の非線型表現を組み合わせて(電磁応答を経ずに)微視的理論から直接に、量子ホール系の素励起及び集団励起を統一的に記述する実効理論を導くことに成功した。今年度はこの枠組を拡張してエッジ(端)状態の記述を試みた。目下、論文をまとめている。 2.ソリトンやドメイン・ウォールなど位相的な励起が現れる超対称理論では超対称代数(の位相荷など)に量子異常が生じうることが知られている。新種の量子異常であり、計算上微妙な点もあって、近年少なからぬ関心が向けられている。昨年度はソリトンの場合に、この位相荷の量子異常を超場を用いた明白に超対称な枠組の中で初めて定式化し、その起源と役割を考察した。引き続き、今年度はドメイン・ウォールと渦糸の場合を吟味した。特に、位相荷の量子異常がボゾン的性格とフェルミオン的性格の二面性をもつことを明らかにした。また、渦糸のスペクトルは量子補正の最低次で厳密に決まること、他方素励起のスペクトルの方は高次の補正を受けることも指摘した。
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