研究概要 |
(1)中性原子から高スピン偏極電子が生成できるなら,イオン化によって電子が飛び去った後の残留イオン殻を同様に偏極させられないかという考えのもと,本年度は基底状態にある原子を光イオン化させた時に電子スピン偏極イオンが生成される可能性を,特にアルカリ土類金属原子Srについて具体的に2つのスキーム,即ち,1光子共鳴2光子イオン化と1光子共鳴1光子イオン化によるスキームを考え,理論評価した。計算の結果,前者のスキームについては1段目のレーザー波長をうまく選択すれば>90%の高偏極イオンが得られることがわかった。後者のスキームについては、〜66%の偏極度のイオンを比較的簡単に生成できることがわかった。 (2)(1)の理論評価を元に,実験を試みた。その結果,理論の予測通り約64%のスピン偏極度を得た。この結果はデュアル型スピン偏極源(電子とイオンの同時スピン偏極)として重要な成果である。 (3)偏極源としての性能向上(偏極度とイオン化収率の向上)のためには,自動電離共鳴を介したイオン化を誘起すればよいのではないかと考えた。そこで,2段目のレーザーを波長固定のエキシマレーザーから波長可変色素レーザーに変更し,実験を試みた。その結果,期待通り偏極度の向上(64%→78%)とイオン化収率の2桁の向上を実現することができた。また,理論の成果としては,超短レーザーパルスを用いたスピン偏極を考案し,ポンプパルスとプローブパルスの時間遅延を制御することによってスピン偏極制御が可能であることを示した。
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