研究概要 |
本研究は、原子核の非軸対称変形をキーワードに、変形主軸からずれた軸の回りの3次元的集団的回転運動を微視的立場から分析するものである。 本年度は前年度に取り組み始めた、斜向クランキング(Tilted Axis Cranking)による強結合回転バンドの記述、および、乱雑位相近似(RPA)の方法による首振り運動の研究をより進めて現実的場合に応用可能な段階まで改良することができた。 第一に取り組んだのは、以前から分析してきた大きな角運動量の対称軸成分を持った,強結合的な1準粒子状態の斜向クランキング法による記述をより改良することであった。昨年の研究により四重極対相互作用が重要な役割を果たすことがわかったが、本年度はこれを一歩すすめて、四重極対相互作用のそれぞれの成分がどのようにエネルギースペクトルや電磁遷移確率影響するかを調べることにより、より簡単で正確な計算方法を確立した。これにより、質量数が155近傍のGd,Dy原子核の中性子h11/2軌道に由来する1準粒子状態を極めて良く記述できることを示した。 第二の課題は、非軸対称超変形状態とその上に励起された集団的状態である、首振り運動の分析をさらに進めることであった。最近になってHf,Lu原子核での実験データが増加し、首振り運動の微視的性質を明らかにすることが急務である。我々の乱雑位相近似法による分析では、首振り運動が集団励起モードとして現れるために、フェルミ面近傍のどの軌道が重要な役割を果たしているかを直接分析できる。本年度は、乱雑位相近似での固有状態の波動関数を調べることにより、準粒子軌道がどのようにして非軸対称変形の成長とともに首振り運動を形成するかを調べ、慣性能率の変化との関係を明らかにした。
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