研究概要 |
最近の実験データは興味深い現象として、原子核の平均場の三つの変形主軸の長さがすべて異なる非軸対称変形状態がイラスト近傍に発現していることを示唆している。本研究は、非軸対称変形をキーワードにして、その発現に必然的に起こる変形主軸から傾いた軸の回りの新しいタイプの非主軸回転運動発生のメカニズムを微視的立場から明らかにするものである。 2年間の本研究では目指した目標を達成できたものとできなかったものがある。特に、回転軸の傾きの自由度を集団座標として量子力学的方程式を解く課題は未完成である。以下では得られた物理的結果をまとめる。 1)高い角運動量の対象軸成分を持った軌道に由来する強結合的な1準粒子状態の分析を傾向クランキング法によって進め、傾いた回転軸を持つ状態が現れる角速度が実験データに対して少し高い方にずれるという問題を解決するためには、四重極対相関の特にK=1成分を取り入れることが非常に有効であることを明らかにした。 2)最近実験的に確認されつつある、Hf, Lu原子核での高スピン状態の非軸対称超変形状態とその上に励起された集団的状態である、首振り運動の分析を乱雑位相近似の方法により分析した。 ポテンシャル面から得られる正符号ガンマの非軸対称変形によれば、通常巨視的模型で用いられる渦なし流体の慣性能率を用いると首振り運動は起こり得ないが、微視的乱雑位相近似では回転軸方向に回転整列した核子の影響が本質的であり、渦なし流体で3つの軸の回りの慣性能率の比が逆転することによって、確かに首振り運動が実現するメカニズムを明らかにした。
|