宇宙項の起源の候補としての自己相互作用スカラー場に対する観測量からの制限

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14540271
• 研究機関: 琉球大学
• 研究代表者: 八尋 正信 琉球大学, 理学部, 教授 (40300537)
• 研究分担者: 梶野 敏貴 国立天文台, 理論天文学研究系, 助教授 (20169444) ; 神里 常雄 琉球大学, 理学部, 助教授 (60045002)
• キーワード: 宇宙項 / 銀河団 / Brane-world 宇宙論 / ビッグバン元素合成 / 宇宙背景輻射 / IA型超新星の観測 / 実証論的宇宙論

研究概要

本研究は、宇宙項の起源や高次元時空の可能性をRandall-Sundrumモデル(5次元宇宙論)の視点から議論する。宇宙の進化のあり方は三つの観測量(ビッグバン元素合成・宇宙背景輻射・IA型超新星の観測)によって規定されている。Randall-Sundrumモデルによる宇宙進化は標準宇宙論のそれからいくつかの点において異なる。この特徴が観測量にどのように反映するかを検討し、Brane-world的世界観が観測量を上手く説明することを示した。特に、以下の点を解明した。
1.Brane-world宇宙論では、有限の宇宙項が自然にでてくる。宇宙項の可能性として、正、ゼロ、負の3通りを考え、理論的にニュートン則を導き出だし、負の宇宙項は、観測事実を矛盾することを導き出した。
2.Brane-world宇宙論では、我々の宇宙は5次元時空に浮かぶ4次元膜(brane)として表現される。このbraneに住む暗黒物質の起源を5次時空内にあるスカラー場と仮定して、5次元スカラー場の性質を調べた。重いスカラー場は有限の時間だけしかbrane上に留まれないことが分った。また、タキオンもbrane上に留まれることを明らかにし、braneが安定に存在しない可能性を示した。
3.2.の研究から、暗黒物質はbraneから5次元世界へと消滅していくことが判明した。この性質を持つ暗黒物質、「消える暗黒物質」、を提案し、この物質の寿命を、3大観測量と銀河団を使って求めた。結果、その寿命は宇宙年齢程度の値を持つ可能性がある。

研究成果

• [文献書誌] M.Yahiro, Y.Kaminaga, Y Saito, S.Ohtsubo: "Chaos in two-dimensional φ^3theory with oscillator modes"Progress of Theoretical Physics. 109. 313 (2003)
• [文献書誌] K.Ghoroku, M.Yahiro: "Scalar field localization on a brane with cosmological constant"Classical and Quantum Gravity. 20. 3717 (2003)
• [文献書誌] K.Ghoroku, A.Nakamura, M.Yahiro: "Newton's law in de Sitter brane"Physics Letters. B571. 223 (2003)
• [文献書誌] T.Matsumoto, T.Kamizato, K.Ogata, Y.Iseri, E.Hiyama, M.Kamimura, M.Yahiro: "New treatment of breakup continuum in the method of continuum discretized coupled channels"Physical Review. C68. 064607 (2003)
• [文献書誌] K.Ogata, M.Yahiro, Y.Iseri, T.Matsumoto, M.Kamimura: "New Coupled-Channel Approach to nuclear and Coulomb breakup reactions"Physical Review. C68. 064609 (2003)
• [文献書誌] K.Ichiki, P.M.Garnavich, T.Kajino, G.J.Mathews, M.Yahiro: "Disappearing dark matter in brane world cosmology : New limit on noncompact extra dimensions"Physical Review. D68. 083518 (2003)