研究概要 |
高次元宇宙モデルの時空構造を,時空の特異点の観点から研究した. ひとつは,特異点が存在しないコンパクトなEuclid計量をもつEinstein空間の構造を調べた.空間構造をQUATERNIONIC KAHLER多様体上のSU(2)バンドルと仮定し,Einstein方程式を常微分方程式に帰着させ,それを数値的に積分することによって解を求めた.その結果,新しい解を見つけると共に,この仮定の元での解を分類することができた.また,重力崩壊によって裸の特異点が発生する時空で,それがどのように見えるのかを解析した.裸の特異点は点ではなく,円盤状に見えることを明らかにした. 次に,ブレイン宇宙モデルでの重力現象を研究した. ブレインがヌル方向に外的曲率をもつような宇宙モデルとしてEinsteinの静的宇宙をブレインに拡張し,反ド・ジッター時空に埋め込まれているものを考え,ブレイン上でノイマン境界条件を満足するような波動を解析した.波動の固有関数はブレインに沿った波長が短くなるとブレイン近傍に局在化することが明らかになった.また,固有関数の分散関係を調べることによって,4次元ブレイン上を伝播する重力波の伝播速度を考察した.その結果,固有関数の拡がりが反ド・ジッター時空の曲率のスケールに比べて大きい場合はブレインに沿った伝播速度が光速を超えることがわかった.これは,ブレイン宇宙を検証する上で興味ある結果である.
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