研究概要 |
ブレイン宇宙など,高次元の最大対称時空を標的時空として埋め込まれた部分多様体のもつ対称性は,標的時空のもつ等長変換群の部分群となる.この部分群の選び方は無限の可能性があるが,連続的な部分群を生成するキリングベクトル場を等長変換の引き戻しによって分類した.その結果,キリングベクトル場は数個の族に分類されることが明らかになり,族の個数は標的時空の等長変換群の構造に依存することがわかった. 回転するブラックホールや帯電したブラックホール時空は,時空の全領域の初期値問題が定義できないという,病的な大域的因果構造をもっている.5次元の帯電したブラックホール時空について,球対称な地平線の形が外的な要因によって3軸不等に変形された場合,大域的な時空構造が変化して時空特異点が空間的になり,時空の全領域に初期値問題が定義できることを明らかにした. ブレイン上の球対称重力崩壊の重力場の性質は,高次元において軸対称な崩壊の重力場に近似できる.そこで円筒対称な完全流体の重力崩壊の性質を研究した.その結果,裸の特異点が中心に存在するが,その重力場の強さは弱いものであることがわかった. 高次元ブラックホール解の構成に関して (1)複数の角運動量を持つ高次元Ads Kerrブラックホール解 (2)上記ブラックホールから、ある種の極限を取ることにより得られる非一様なEinstein計量の族,という2つの成果が得られた.これらの新しいEinstein計量は,具体的に陽に座標を使って書かれておりブレイン宇宙への応用が期待できる.
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