「膜の世界」の研究に関連して、主に2つの研究を行った。 1.「膜の世界」のアイディアが現実に実現されるためには、我々の世界を記述している4次元膜上に局所場が局在化される必要がある。この局在化を引き起こす機構として重力相互作用だけを使った全く新しい局在化の機構を作った。この機構では、ワープ因子は指数関数的に減衰するのではなくて、多項式的に緩やかに減衰するが、確かに4次元膜上にすべての局所場が局在化される。 2.1984年にグリーンとシュワルツは、時空の超対称性が明白である超弦理論の古典的な作用を提出した。その後この作用は超膜理論に対しても拡張された。この作用をローレンツ共変に量子化することが難しかったので、光円錐ゲージで量子化されたが、このゲージでは外線の数が多いときのツリー振幅や多重ループの計算を行うことは不可能であった。従って、グリーン・シュワルツの作用をローレンツ共変な形で量子化するという問題は重要な問題であるにも関わらず、約20年間未解決の問題として残っていた。 しかし、最近この作用は、ピューアスピナーを用いればローレンツ共変な形で量子化可能であるかもしれないことをバーコビッツが指摘された。バーコビッツの論文には、彼の作用とグリーン、シュワルツの作用の関係が明確でないこと、起源となる理論が明らかでないことなどの問題があったので、我々はこれらの問題を解決した。また、この量子化の方法を11次元のM理論に対応するローレンツ共変な行列模型を構成することに成功した。さらに、理論内に存在するb場の構成とその性質を明らかにした。
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