今年度は、実験装置を改良し、紫外領域の高分解能レーザー分光を行った。2倍波生成装置を導入し、既存の半導体レーザーと組み合わせて、約50μWの400nm前後の紫外光を得た。この紫外光線を用いて紫外領域のAlの高分解能レーザー分光を行い、Alの超微細構造を調べ、^<27>Alの超微細構造定数を決定した。Alについて、これまでに超微細構造の研究の報告がなく、基底状態の超微細構造がまだ分かっていない。そして、高融点元素のLuの紫外領域のレーザー分光を行い、微量な超長寿命の天然放射線核種^<176>Luの超微細構造スペクトルを観測し、^<176>Luの高励起準位の超微細構造定数が得られた。また、希土類元素のHoとErの高分解能原子線半導体レーザー分光を行い、^<165>Hoの超微細構造定数及び^<162-170>Erの同位体シフトを求めた。 Stark効果の実験について、今年度は電極装置を改良し、約40kV/cmまでの強電場を生成できた。Rb原子の基底状態からのD1(694.8nm)光学遷移のStarkシフトを再測定した。さらに、Cs原子の基底状態からのD2(852.1nm)光学遷移について、系統的にStark効果を調べた。電場によるシフトのみならず、分岐も観測できた。シフトや分岐が電場の2乗に比例していることや、分岐が超微細遷移に依存していることが確認された。そして、Rb原子のスカラー分極率とCs原子のスカラー、テンソル分極率を導いた。
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