電力供給が必要な検出器や電磁石を設置できないような環境でも使用可能でかつコンパクトなエマルションスペクトロメーターを開発した。 1.コンパクトエマルションスペクトロメーター用永久磁石磁気回路を企業の研究者、技術者と共同で設計、製作した。2種類の磁気回路について発生磁束密度を計算し、分布が均一な3層構造のハルバッハ型磁気回路を選択した。 2.製作した磁気回路の内部磁束密度を測定し、ほぼ設計通りの値であることを確認した。 3.エマルションフイルムとスペーサーからなるエマルションチェンバーを製作し、磁気回路内部に挿入し、エマルションスペクトロメーターを製作した。 4.放射線医学総合研究所の重粒子線がん治療装置(HIMAC)からの炭素ビーム(180MeV/核子)を製作したコンパクトエマルションスペクトロメーターに照射してその性能を調べた。最上流と最下流フイルムでの飛跡の角度差から炭素ビームの運動量(p/z)を約12%の精度で測定することができた。 5.欧州合同原子核研究機関のSPSからのインジウムドーム(158GeV/核子)を製作したコンパクトエマルションスペクトロメーターに照射して、高エネルギー原子核・原子核反応で生成されたπやKなどの中間子の運動量を測定できるか試みた。現在、解析が進行中である。
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