研究概要 |
超ひも理論の進展により考え出されたブレインという概念はこれまでの高次元世界の考え方を大きく変えた.KaluzaとKleinに起源を遡ることの出来る高次元時空を用いた統一理論は,通常,余分な次元を観測不可能な程度にコンパクト化することによって,現在の4次元時空を説明するが,ブレインの存在は余分な次元のサイズを比較的大きくすることを可能にし,その検証可能性を与えたことで一躍注目されている.さらに,RandallとSundrumによる2つのモデルは,新しいタイプのコンパクト化を与え,特に第2モデルは余分な次元をコンパクト化せずニュートン重力を導いたことで多くの科学者の注目を浴びることになった.そのような状況において,このブレイン重力理論を基礎にした宇宙初期モデルおよびブラックホールや重力崩壊などの強重力現象を系統的に解析することは重要であり,本研究では,第一線で活躍する2人の研究者(D.Wands & D.Langlois)とともに新しい宇宙像の構築を試みている.本年度は11月にD.Langloisが,3月にD.Wandsが来日し,具体的な共同研究を行った.ブレイン宇宙モデルの先駆的な研究を行っているD.Langloisとは,5次元バルク重力が超ひも理論の場の理論的極限で現れるGauss-Bonnet項を含む場合の解析を行っている.この場合,宇宙の進化は有効フリードマン方程式で記述されるがダークエネルギーなどその解釈が大きく変わることを明らかにした.また,D.Wandsとは,最近注目されているブレイン衝突による宇宙モデル(エクピロティック宇宙シナリオ)を含むブレイン宇宙論における密度揺らぎの形成などの詳細な解析を行い,それらが従来のインフレーション・シナリオを超える新しい宇宙初期のシナリオとなるかどうかについて考察を行っている.
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