研究概要 |
宇宙ステーション搭載用全吸収型カロリメータ(TASC)に使用する無機結晶シンチレータとして、BGO結晶と鉛タングステン(PWO)結晶を取り上げて基礎実験を行った。BGO結晶に比べてPWO結晶は、大きい密度と小さい放射長を持ち、より面積が大きくより薄い検出器を製作することができる。また、より安価(数分の一)に購入できるという利点もある。一方、PWO結晶の欠点は発光量が小さいことであり、PWO/BGO光量比としては1/15〜1/100という値が報告されている。PWO結晶やBGO結晶の発光量を正確におさえることはTASCを製作する上で必要不可欠であり、今回の研究でシンチレーション光収率の測定を行った。購入したシンチレータは、Crisimatic社製のBGO結晶(2.5cm×2.5cm×30cm)、上海SIC社製のBGO結晶(2.5cm×2.5cm×30cm)およびPWO結晶(2.5cm×2.5cm×24cm)である。これらのシンチレータにテフロン反射材を巻き、密封線源(^<137>Cs、^<60>Co)からのγ線(0.662MeV,1.173MeV,1.333MeV)および地上の宇宙線μ粒子を用いて、シンチレーション光を光電子増倍管により測定した。この際、宇宙線μ粒子についてはGeant3を用いてシミュレーションを行い、ADC分布を再現して分布のピーク値(付与エネルギー)を求めている。(BGO結晶で27.6MeV、PWO結晶で31.6MeV)。これらの測定およびシミュレーション結果から、Crismatic社製BGO結晶で323.8p.e./MeV、上海SIC社製のBGO結晶で307.0p.e./MeV、上海SIC社製のPWO結晶で7.0p.e./MeVというシンチレーション光収率を求めることが出来た。PWO結晶の発光量はBGO結晶に比べて1/44〜1/46となっている。
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