研究概要 |
宇宙ステーション搭載用全吸収型カロリメータ(TASC)に使用する無機結晶シンチレータとしてBGO結晶と鉛タングステン(PbWO_4)結晶を候補として取り上げ、読み出し試験を行った。その結果、PbWO_4結晶はBGO結晶に比べて安価であるものの発光量がBGO結晶の約1/50であることを確認した。BGO結晶がフォトダイオード(PD)で読み出せるのに対し、PbWO_4結晶の読み出しにはPMTかアバランシェPD(APD)といった高増幅率のセンサーが必要になることから、BGO結晶を使ったTASCのモンテカルロ・シミュレーションや性能評価実験を行った。TASCが果たす重要な機能である電子と陽子の選別能力をモンテカルロ・シミュレーションにより評価すると、TASCの底に位置するBGO結晶層でのシャワーのエネルギーと横広がりの関係を使うことによって、TeV領域の電子に対し約10^6という陽子除去能力を達成できることが分かった。この性能を実際に評価するために、BGO結晶ログ(2.5cm×2.5cm×30cm)2本を10層重ね、下3層ではシャワーの横広がりを考慮して両側にさらに2本のBGO結晶ログを配置したビーム実験用のBGO検出器を製作した。BGO結晶の読み出しにはフォトダイオードを使用している。2003年9月に欧州原子核共同研究所(CERN)の陽子加速器(SPS)において、電子(50GeV,100GeV)、陽子(150GeV)、ミューオン(120GeV)の各ビームをこのBGO検出器に照射して性能評価実験を行った。シミュレーションによって開発したTASCでの陽子除去手法をビーム実験用検出器の一番底のBGO結晶ログに適用すると、これまでのエネルギー損失量のみの手法にシャワーの横広がりを考量することによって、陽子除去能力が向上することを確認することができた。
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