研究概要 |
本年度は、特異的なカラビ-ヤウ多様体のブローアップされたP^1に巻き付いたD-ブレイン上の4次元N=1超対称ゲージ理論の有効ポテンシャルを、「幾何学的転移」(geometric transition)により行列模型によって計算するというダイグラーフ-バッファ(Dijkgraaf-Vafa)理論に関する研究を行った。 まず、行列模型曲線のカットの端点が合流して、ゲージ理論が相転移をおこすような簡単で典型的な例として、エルミート1-行列模型が4次ポテンシャルW_<tree>(M)=m/2M^2+1/4M^4をもつ場合を例にとり、真空の揺らぎが大きくなるような状況での理論の適合性について検証した。この行列模型の解が2-カットから1-カットへ3次相転移することや、相転移点近傍の自由エネルギーがダブルスケーリング極限でパンルベII型の方程式で記述されることはよく知られており、同じtree-レベルスーパーポテンシャルをもつアジョイント・カイラル超場が結合した、N=1,SU(N)超対称ゲージ理論の低エネルギー有効理論を記述する。この場合には行列模型の解析解が求まってしまうので、相転移点の近くでこの対応を適用してみて、有効スーパーポテンシャルに発散や不連続な点などの矛盾が生ずるかどうかを検証できる。その結果、ポテンシャルの値は右側と左側とで滑らかにつながり、またU(1)ゲージ場は存在しない1-カット側で、実際はきちんとそこで0となって、相転移点近傍でも行列模型と超対称ゲージ理論との対応は矛盾なく成り立っていることがわかった。 また、ゲージ理論が基本表現に属する物質場と結合している系の最低次の重力補正を一般のポテンシャルで任意のカット数の場合について表す公式を導き、それが2次元c=1共形場理論のカイラル相関関数にまとまることを見いだした。
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