研究概要 |
本研究は、超絃のモジュライが固定される基本的な機構を解明することを目指し、超絃が「特異」な多様体上にコンパクト化された時の性質を調べ、より自然に現実的な模型を構成する可能性を探ることを目的とした。 平成14年度は、自明でないRRフラックスをもち、最大に超対称性を保つPP波背景場における超絃のコンパクト化についての研究を主に行った。RRフラックスがある場合、通常のNS-R形式による量子化はできないが、最大に超対称なPP波解中ではグリーンーシュワルッ作用がフェルミオニック変数の2次までで表され、量子化できることが知られていた。我々は、ペンローズ極限で得られる一般の平面波解中でタイプIIBグリーン-シュワルツ作用が常に2次で切れることを厳密に証明し、超共変微分で表される2次の項を正確に求めた。また、最大に超対称なPP波解は、AdS5×S5から受け継がれた多くのアイソメトリーをもつが、我々は定数ノルムをもつ2つのサイクルをコンパクト化し、平坦な背景場中の場合と比較して超絃のゼロモードが一部欠損しているにもかかわらず、O(2,2;Z)T-デュアリティーが依然として成り立つことを示した。 平成15年度は、特異的なカラビ-ヤウ多様体上のD-ブレイン上の4次元N=1超対称ゲージ理論の有効ポテンシャルを、「幾何学的転移」により行列模型によって計算するというダイグラーフ-バッファ理論に関する研究を行った。まず、4次ポテンシャルの1-行列模型を例にとり、カットの端点が合流してゲージ理論が相転移をおこす点の近くでも有効ポテンシャルは滑らかにつながり、行列模型と超対称ゲージ理論との対応は矛盾なく成り立つことを示した。また、ゲージ理論が基本表現に属する物質場と結合している系の最低次の重力補正を表す一般公式を導き、2次元c=1共形場理論のカイラル相関関数にまとまることを見いだした。
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