反対称化分子動力学法を用いて不安定原子核の構造計算を行い、陽子変形と中性子変形を調べた。まず、Cアイソトープの内部変形についての研究で、^<16>C、^<18>Cのそれぞれで、陽子と中性子の変形が異なるという「変形共存」の可能性を理論的に予言した。さらに、Cアイソトープにおける変形構造の変化によって、B(E2)の実験値を系統的に説明できることを示した。中性子数N=14の不安定核においても、陽子変形と中性子変形に同様な現象が見られることを予言した。また、11Cや11Bなどの原子核の励起状態状態を研究し、励起エネルギー8MeV近傍に、非常に発達した3体クラスター的な構造が表れうることがわかった。理論計算でGamov-Tellar遷移やM1遷移の実験値を非常に良く再現でき、クラスター的状態とシェル模型的状態の混在を示唆する興味深い結果が得られた。 さらに、反対称化分子動力学法を拡張して、クォーク模型によるハドロン構造の研究に適用した。有効相互作用としてフラックスチューブで近似した閉じ込めポテンシャルを導入することによって、通常のハドロンスペクトルに加えて、最近見つかったペンタクォーク(5個のクォークをもつ新しいバリオン)の構造研究を行った。 スピンパリティーが3/2-の状態が低エネルギー領域に現れる可能性を指摘し、それによって非常に幅の狭い状態が存在しうることを予言した。
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