反対称化分子動力学法を用いて不安定原子核の構造計算を行った。近年話題になっているCアイソトープの陽子と中性子の振る舞いの相違に関して電気双極子の励起強度を調べ、16Cにおいてエネルギーの低い双極子強度が出現する可能性を理論的に予言した。電気双極子の強度の理論計算を行うための手法として時間依存の反対称化分子動力学法を応用する方法を構築し、不安定原子核へ初めて適用した。また、11Cや11Bなどの原子核の励起状態状態を研究し、励起エネルギー8MeV近傍に、非常に発達した3体クラスター的な構造が表れうることを予言した。理論計算でGamov-Tellar遷移やM1遷移の実験値を非常に良く再現でき、クラスター的状態とシェル模型的状態の混在を示唆する興味深い結果が得られた。さらに最近の非弾性散乱実験で、基底状態からこの励起状態へ強い単極子遷移が観測されたが、我々の理論計算においてその実験値を再現することに成功した。この3体クラスター的状態は強い単極子遷移に特徴づけられ、3つのクラスター(2α+t)が緩く束縛された状態であることを理論的に示し、12Cの第二0+状態に類似したクラスターの気体的な状態の候補と考えられるという新たな知見を得た。一方、新たに開発した有限レンジ3体力を含む有効相互作用をsd殻領域の原子核に適用し、例えば、40Caの超変形状態の研究を行った。得られた結果から、超変形状態が8粒子-8空孔状態を主成分にもつと同時に、クラスター的な相関に起因するパリティ非対称な内部変形をもつという奇妙な構造の可能性を指摘した。
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