軽い原子核から重い原子核までの幅広い質量数領域の原子核の構造の性質を再現できる相互作用として、有限レンジの3体力項を含む相互作用を開発した。α-α散乱のPhase shiftやαの大きさなど非常に軽い原子核の性質を再現すると同時にp殻原子核やsd殻原子核の基底状態の半径や結合エネルギーを系統的に再現することに成功した。さらに、ゼロレンジ3体力項を含む有効相互作用について、特に有限レンジの2体力を含む相互作用の再検討を行った。有効相互作用の考察に基づいて、pシェルからsdシェルの不安定核領域までの原子核構造の研究を行った。反対称化分子動力学法を用いた系統的な構造により、「陽子分布と中性子分布の異なる変形」、「変形構造とクラスター構造の関連づけ」、「クラスターのガス的状態」などに関して、いくつかの独創的な予言を行い、核子多体系の多様な存在様式が出現することが明らかにした。それらの多くがクラスター的性質と平均場的性質の共存に起因することを示し、質的に異なる二つの性質の共存は原子核の普遍的性質の一つであるという非常に重要な知見を得た。以下に具体的な成果の例を挙げる。 中性子過剰なCアイソトープの基底状態では陽子分布と中性子分布が異なる変形構造をもつことを理論的に提唱し、異常に小さなE2遷移強度の実験値を説明できることを示した。また、11Cや11Bなどの原子核の励起状態状態を研究し、励起エネルギー8MeV近傍に観測されている状態が3つのクラスター(2α+t)が緩く束縛された状態であることを理論的に予言し、12Cの第二0+状態に類似したクラスターの気体的な状態の候補と考えられるという新たな知見を得た。一方、sd殻領域の原子核構造については、例えば、40Caの超変形状態の研究を行い、超変形状態が8粒子-8空孔状態を主成分にもつと同時に、クラスター的な相関に起因するパリティ非対称な内部変形をもつという奇妙な構造の可能性を指摘した。
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