研究概要 |
分子性結晶ヨウ化スズ(SnI_4)を圧縮して起されたアモルファス状態を30GPaから減圧すると、3GPa付近で第1ハローのピーク位置の不連続シフトが生じ、ここから再加圧すると6GPa付近で逆方向への不連続シフトがみられることがわれわれの以前の研究ですでに知られていた。この事実が示唆するアモルファス構造内での構造変化を定量的に追及し,不規則構造内の相転移の性質を明らかにすることが本研究の目的である。 最初に、放射光X線回折実験によるアモルファス構造の精密解析を行い、SnI_4の圧力誘起アモルファス-アモルファス相転移を構造面から調べた。構造因子S(Q)は減圧過程の3GPaを境に、第1ピークの半値幅とハローの形状が大きく変化することがわかった。前後の圧力で測定したS(Q)をフーリエ変換して得た還元動径分布関数G(r)を調べたところ、3GPaまでは分子内結合に相当するSn-I距離とI-I距離が消滅していたが、それ以下の圧力ではSnI_4分子の再形成をはっきりと示すピークが現れた。再加圧に際してはこれと逆の過程が約7GPaで起きた。この振る舞いは、最近発見が相次ぐ圧力誘起アモルファス構造の不規則構造間の相転移と考えられる。とくにSnI_4に特徴的なのは、分子形成/解離が同時に起きることである。これは氷の圧力誘起アモルファス-アモルファス相転移よりも、孤立分子の形成/重合を伴う液体リンの相転移に類似することがわかった。 これまで高圧力下でアモルファスの「密度」を求めることは非常に困難であった。本研究により、精度良く構造因子を測定し、それを注意深く解析して密度を求めることに成功した。その結果、アモルファス-アモルファス相転移に際してS(Q)だけでなく密度も大きな圧力ヒステリシスが伴うこと、非分子性構造から分子性構造べの変化に際しては急激な硬化現象を示す構造異常ことが明らかになった。さらに本研究ではラマン散乱によるアモルファス-アモルファス相転移の分光実験を行い、これまで知られていなかった新たなモードを測定した。
|