研究概要 |
本研究課題は,内部電場のナノ空間構造に基づく特異な光-物質相互作用のサイズ依存性を明らかにすることを目的としているが,15年度は次の2点を中心に調べた。 1.GaAs薄膜を用いた縮退四光波混合の実験データにおいて、環境層に分布ブラッグ反射器などの構造を設定することによって非双極子的準位の輻射緩和時間が著しく変化するとの結果が得られた。これを理論的に裏付けるため環境層の誘電的構造を変化させた場合の閉じ込め励起子の輻射寿命を系統的に調べた。 2.内部電場のナノ空間構造に基づく光学応答の特異なサイズ依存性はナノスケールな分極配向構造によっても現れると考えられる。ここでは特異な分極配向構造の一例として生体高分子などに見られる螺旋構造を想定し、その線形・非線形応答を調べた。 それぞれについての主な結果は以下の通りである。 1.環境層における誘電的構造のナノスケールな変化によって活性層中での輻射場の振幅と位相が多様に変化し、これにより非双極子的励起子準位の応答速度が劇的に制御できることが分かった。この結果は、電子的活性部位と環境の構造をトータルに捉えて全系を設計し、活性部位内の輻射場の振幅と位相を適切に設定できれば、長波長近似の枠内では現れないような高速な応答速度を実現できることを示唆している。[IQEC2004にて発表予定] 2.同じ膜厚でも螺旋の条件によって光と相対的に強く相互作用するモードが様々に変化するという結果が得られ、螺旋周期が光学応答制御の重要な自由度となることが明らかになった。また、直線偏光入射の場合においても純粋な円偏光を持つ非線形信号が発生するなどナノスケールな分極配向構造が通常の固体結晶では現れない光学応答を発現させる有効な自由度であることを示す結果が得られた。
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