研究概要 |
朝永-ラッティンジャー流体(TLL)アイランドを有する微小2重トンネ接合のクーロン・プロッケイドの基礎理論を定式化し、以下の結果を得た。 (1)アイランドの電極電子状態が1バンドTLLある容量結合型微小2重トンネル接合に於けるトンネル電流の解析的表式を得た。 (2)得られたトンネル電流は、任意の温度、任意の電磁場環境効果(エネルギー散逸効果)の下での、アイランドの電荷状態を自己無撞着に記述する。, (3)得られたトンネル電流は、実験のコンタクト形式に対応する境界条件を2つの極限として含む一般的なものとなっている。 (4)得られた電流は、電圧に関する"べき"特性を示し、その基本的に非線形な電流がクーロン・プロッケイド特有の現象であるクーロン階段、クーロン振動などを示すことを正確に記述する。 (5)この理論により、実験的に得られた電流-電圧特性、コンダクタンスの解析が可能となる。 (6)実験的に得られている"べき"の大きさは、十分大きなTLLに対してではなく、クーロン・プロッケイドを起こす程度に微小なTLLに対して議論されるべきであるが、この理論は"べき"の大きさのアイランドのサイズ依存性をも記述する。 以上のように、本研究結果により、TLLアイランド(カーボンナノチューブ、量子細線など)を有する2重トンネル接合系のトンネル電流特性に関する既知の実験事実の基礎的理解やそれを超えた理論的予測が可能となったと考えられる。 一方、カーボンナノチューブの詳細な電子状態を考慮してTLLとしての記述に関する研究もおこなった。これは、上記理論をアイランドとしてカーボンナノチューブを用いたトンネル接合系に具体的に適用してゆくために必要である。核磁気緩和率、輸送特性、有限長のカーボンナノチューブのTLL理論に基づく電荷密度のフリーデル振動や局所状態密度を議論した。この意味で、当初の研究目標は基本的に達成されたと考える。
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