研究概要 |
本研究は,励起子研究のモデル物質であるβ-ZnP_2化合物半導体結晶を対象として,高分解レーザー分光および超高速時間分解分光を実施し,光吸収に引き続く励起子の生成過程ならびに個々の緩和素過程の詳細を明らかにすることを目的としている。本年度は,以下の研究を実施した。 1 ターボ分子ポンプ排気ユニットを導入し,気相成長法による単結晶作製時における反応石英管の真空度と真空を向上させ,結晶試料の高純度化をはかった。 2 励起子の微細構造を探ることを目的として,高分解光変調反射分光を実施した。プローブ光に線幅の狭い波長可変CWチタンサファイアレーザーを用いることで,n=6までの非常に鋭い励起子構造を明瞭に観測することに成功した。この光変調反射の信号は,'結晶の表面電場変調により生じる事を示すとともに,変調スペクトルΔR/RのKramers-Kronig解析から,誘電関数の変化Δε_1,Δε_2を求めた。これらの研究成果は,平成14年7月にオーストラリアのダーウィンで開催された第5回励起子過程国際会議(EXCON'02)で発表した。 3 励起子系の位相緩和に関する知見を得る目的で,フェムト秒モードロック・チタンサファイアレーザーを光源として,スペクトル分解の反射型縮退四光波混合分光を実施した。励起子ポラリトンのL-Tギャップ域における位相緩和時間T_2として1〜4psを得た。このエネルギー位置の違いによる乃の差異は,ポラリトンの音響フォノン散乱の割合いの違いを反映している。また,四光波混合光信号の遅延時間依存において明瞭な量子ビートを観測することに成功すると共に,励起子分子発光のエネルギー位置において励起子-励起子分子間の非線形分極に起因する四光波混合光を観測した。これらの研究成果は,平成14年6月にモスクワで開催された量子エレクトロニクス国際会議(IQEC2002)で発表した。
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