研究概要 |
本研究は、有機物質の結晶成長において「テンプレート」(鋳型)によって誘導される不均一結晶核形成の動的なメカニズムを解明することを目的とする。そのために、放射光X線解析により、テンプレート誘導核形成現象の「その場観察」を行なう。成長環境としては、バルク溶液と分散系水中油型(O/W)エマルションをとりあげ、結晶化させる物質としてアルカンを用いる。テンプレートとして、バルク溶液系では蒸着薄膜、エマルション系では両親媒性長鎖状分子の界面吸着膜を作成する。平成14年度では、エマルションにおいてテンプレートに誘導される不均一核形成の観察を行う。具体的には以下のとおりである。 n-ヘキサデカンを水に分散したエマルションに、疎水性界面活性剤を添加し、それに誘導される不均一核形成の速度論を放射光X線回折とDSCの同時測定により、テンプレートの形成による誘導核形成現象をその場観察する。具体的には、以下の結果が得られた。 1)添加物として、モノアシルグリセロールを用いて、アルカンのO/Wエマルションにおける結晶核形成と結晶成長を観察した。その結果、添加物のない場合には、三斜晶型のアルカン結晶が核形成するのに対して、添加物がある場合には、偽ヘキサゴナル型-斜方晶型の結晶が核形成した後に、三斜晶型の結晶が核形成することが確認された。 2)核形成する温度は、添加物がない場合に比べて、添加物の存在かでは高温側にシフトすることが見い出された。そのシフトの程度は、添加物の濃度が増すにつれて拡大することが判明した。 3)モノアシルグリセロールによる添加物効果を、他の疎水性添加物の場合と比較した場合、核形成促進効果は低減する。 4)以上の結果を,エマルション界面における不均一核形成モデルで説明した。
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