研究概要 |
Yoshimoto, TsukadaによるP型欠陥を含むユニットセルでの第一原理DFTの結果を使い低温まで有効な高精度ダイマー系モデルポテンシャルを開発した。このモデルポテンシャルにより,70KでのP型欠陥の時間揺らぎのスケールが24000倍改善された。DMCS結果は,Hata他によって行われた70KでのTCHC STMの実験結果をよく再現する。このことから開発された高精度ダイマー系モデルポテンシャルの有効性が確かめられた。 低温でのSTM電流による振動励起を調べるために、Si(001)表面で電子系とダイマー振動系の結合を含んだ新たなモデルを作った。ハミルトニアンに現れる電子系-振動系の結合定数を本研究により開発された高精度ダイマー系モデルポテンシャルをもとに決定した。このモデルに基づく結果は,表面温度が20K以下では,50pA程度のSTM電流で実効温度が300K程度になり,表面温度が70K程度以上では,実効温度は表面温度とほぼ一致することを示す。これは,Si(001)において20K以下で観測例が報告されている対称ダイマー像を説明する。表面温度が30K程度に上昇すると表面π電子系の励起により振動の実効温度が冷却される。この励起は,必ずしも熱励起である必要はなく,光による励起,電子注入によっても同様の冷却が期待される。我々が励起誘起冷却と名付けたこの現象には広範な応用が期待される。 Si(001)表面・Ge(001)表面の相転移のようすを2次元イジングモデルに投影して理解することは極めて重要である。Si(001)表面に至る前段階の簡単化したモデルとして、2次元イジングモデルのスピン状態を動的に測定し、マルチフラクタルであることをはじめて示した。
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