磁性半導体の磁性と伝導および光学的性質の理論的研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14540311
• 研究機関: 神奈川工科大学
• 研究代表者: 高橋 正雄 神奈川工科大学, 工学部, 教授 (00163288)
• キーワード: 磁性半導体 / スピントロニクス / 希薄磁性半導体 / キャリア誘起強磁性 / 交換相互作用

研究概要

申請者らが開発した動的コヒーレント・ポテンシャル近似(動的CPA)を使って、磁性半導体及び希薄磁性半導体についての理論的研究を行った。昨年度に引き続き本年度も、スピントロニクスの材料として注目されている(Ga,Mn)Asのキャリア誘起強磁性の発現機構の究明に力がそそがれた。
申請者は既に、青山学院大学久保健教授と共同で、磁気的不純物状態の性質について、温度変化、磁化変化、キャリア濃度変化、キュリー温度、Mn濃度依存性だけではなく、交換相互作用依存性や非磁気的ポテンシャルの効果なども広く調べている。その結果をもとに、この系のキャリア誘起強磁性は、pホールが磁気的不純物バンド内でホッピングをして局在スピンを揃える、二重交換型作用によって引き起こされているという結論を得た。さらに青山学院大学古川信夫助教授も研究グループに加わり、誘起磁化の温度依存性や光学的電気伝導度の計算も行われた。これらの研究成果は、2003年7-8月に開かれた国際磁性会議(ICM2003,ローマ)と国際会議スピンテックII(ベルギー)で発表された。さらに、研究成果は11月JPSJに掲載され、JMMMにも近く掲載される予定である。これらの研究成果は多くの研究者の注目を集め、解説書は固体物理10月号に掲載され、レビューはRecent Research Developments in Magnetism & Magnetic Materials Vol.1-2003 Part Iという書にも掲載された。さらに(Ga,Mn)Asに特有の光学的性質を調べ、その成果は現在アメリカ物理学会誌Phys.Rev.に投稿中である。この他にも、産業総合研究所での講演2回、日本物理学会で2回(共著者)、厚木で開かれた国際シンポジウム(MS+S2004)での発表がなされた。
これらの研究活動を通じて、平成14年度の科研費で購入したミニワークステーションが大きな役割を果たしている。また平成15年度夏に、イタリアやベルギーの国際会議に参加発表できたのは科研費の申請が認められたおかげである。

研究成果

• [文献書誌] M.Takahashi, K.Kubo: "Origin of carrier-induced feromagnetism in magnetic semiconductors"Pysica B. 329-333. 1247-1248 (2003)
• [文献書誌] 高橋正雄, 久保健: "希薄磁性半導体におけるキャリア状態と強磁性発現機構"固体物理. 38. 691-700 (2003)
• [文献書誌] M.Takahashi, K.Kubo: "Carrier States and Ferromagnetism in Diluted Magnetic Semiconductor"Journal of Physical Society of Japan. 72. 2866-2879 (2003)
• [文献書誌] M.Takahashi, Furukawa, Kubo: "Origin and nature of carrier-induced ferromagnetism in diluted magnetic semiconductor"Journal of Magnetism and Magnetic Materials. In press. (2004)
• [文献書誌] M.Takahashi, Furukawa, Kubo: "Origin and nature of carrier-induced ferromagnetism in diluted magnetic semiconductor"ICM2003:Abstract book. 394 (2003)
• [文献書誌] Masao Takahashi: "Carrier-Induced Ferromagnetism in Diluted Magnetic Semiconductor"SPINTEC 2:Abstract notebook. 88 (2003)
• [文献書誌] Masao Takahashi: "Recent Research Developments in Magnetism & Magnetic Materials Vol.1-2003 Part I"Ed.by S.G.Pandalai(Transworld Research Network, Kerala, India). 31 (2003)