研究課題
基盤研究(C)
1996年に東北大学のグループがIII-V族化合物のGaAsにMnをドープして強磁性になることを発見すると、電子のもつ電荷とスピンの両方の特性を生かす新しいデバイスの材料として多くの研究者を引き付けた。その後の急速な発展は、「スピントロニクス」とよばれる工学分野を生んだほどである。実用化のためには室温で強磁性を示す材料の開発が必要であるが、懸命の努力にもかかわらず、これまでのところ実現していない。室温強磁性半導体の開発のためには、強磁性発現のメカニズムを知る必要がある。強磁性の発現にホールが関与していることが確実なことから「キャリア誘起強磁性」と命名されたこの磁性の起源と発現のメカニズムを明らかにしようというのが、本研究の中心テーマであった。私達は他の希薄磁性半導体と同様に、キャリア(pホール)と局在スピン(Mn 3dスピン)との間の交換相互作用が、この物質で最も重要な役割を担っていると考えて、簡単なモデルを仮定し、動的コヒーレント近似(動的CPA)を適用した。その結果、この系ではpホールが結晶内を自由に動くのではなく、Mnイオンに準束縛され強くスピン結合し、ホッピング伝導する過程で局在スピンを揃えて強磁性を発現させる二重交換型のメカニズムがはたらく可能性が強いことを明らかにした。更に私達は、交換相互作用とクーロン引力のパラメータが様々な値をとる場合を考察し、どのような条件の下で平均場近似的描像が有力で、どのような条件の下で二重交換的描像が成立するかを詳しく調べた。キュリー温度を計算するだけではなく、磁化-温度曲線も計算し実験と一致することも確かめた。Ga_<1-x>Mn_xAsでは磁気光学的実験より見積もられたpd交換相互作用が、大きさだけでなく符号さえも、他の実験から得られたものと異なるという特異性があったが、これも磁気的不純物状態(バンド)の特性に関係した現象であるとして説明できた。これらの研究を通して、この系でのランダムネス(不規則性)とpd交換相互作用の多重散乱効果の重要が明らかになった。これらの研究成果は、16編の学会誌等に掲載された論文、22件の国際会議等の口頭発表の形で発表された。
すべて 2005 2004 2003 2002
すべて 雑誌論文 (12件)
Journal of Physical Society of Japan 74
ページ: 1642-1643
Journal of Physical Society of Japan 74 no.5
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 272-276
ページ: 2021-2022
Physical Review B 70
ページ: 035207-035216
Physical Review B 70 no.3
ページ: 035207(16)-035207(16)
Journal of Physical Society of Japan 72
ページ: 691-700
Recent Research Developments in Magnetism & Magnetic Materials 1 Part1
ページ: 195-225
Journal of Physical Society of Japan 72 no.11
ページ: 2866-2879
SOLID STATE PHYSICS (KOTAI BUTSURI) Vol.38 no.10
Physical Review B 66
ページ: 153202-153206
Physical Review B 66 no.15