研究概要 |
超高真空中に置かれた、温度25KにおけるAg(001)単結晶表面(試料1)、および、2次元Ag-Naの構造(試料II)をSPring-8、表面界面ビームラインBL13XUのX線を用いて調べ、その表面構造に関する知見を得た。 超高真空槽内でアルゴンスパッタリング(Ar^+500eV、10^<-3>Torr)と試料加熱(500Kから800Kまで徐々に加熱)の組合せを40サイクル繰り返し、Ag(001)単結晶表面の不純物を取り除き、清浄化した。昨年度の成果の一つとして確立した(低速電子線回折のスポットの大きさから、表面の結晶性を評価する)方法を用い、各サイクル終了後、表面結晶ドメインサイズを評価した。最大ドメインサイズをX線測定の試料I、試料IIのNa蒸着前の状態とした。0.099nmの波長をもつ単色X線を用いた。結晶表面の2次元性のため、逆格子空間において結晶表面のブラッグ回折条件は、パルク結晶のブラッグ点を中心に試料表面法線方向にのびる棒状-Crystal truncation rod(CTR)-となる。複数のCTR(11L,20L,13L,22L,42L)に沿って、回折X線強度曲線を測定した。(Lはほぼ結晶表面に垂直方向であり、その方向の入射X線と回折X線の運動量変化を試料の格子定数を使って表現したものである。)この実験強度曲線に偏光X線補正、ローレンツ補正、表面におけるX線の照射面積補正を施した後、表面の原子構造モデルを仮定した計算強度曲線と比較した。その結果、表面第1層Agと第2層Agの間隔がバルクAgの面間隔の0.54%収縮していることことが明らかになった。この値は第1原理計算の1.3%より小さい値であった。また、表面結晶ドメインサイズは約80nmであった。
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