ここ数年においては、k-(BEDT-TTF)_2X系において、部分重水素置換による化学圧力の導入で、Mott近傍での物質のコントロールができることを実証し、それらのコントロールされた試料を用いて、詳細なデータの収集や、Mott近傍での超伝導-AF転移や、状態密度の変化等強電子相関系で重要な現象を発見した。そのなかで磁場による超伝導-絶縁体転移のメカニズムの解明は、強相関電子系を理解するうえで重要なものだと考えられる。微視的電子状態をチェックするうえで重要なNMRな測定手段であるが、部分重水素化したBEDT-TTF塩はその合成法からいままで^<13>Cにエンリッチすることができず、NMRの研究ができない状態にあった。今までとは違った合成ルートを検討するすることにより部分重水素化された^<13>C置換BEDT-TTFを合成することに成功したので、同位体を本研究費で購入し研究に十分な量の部分重水素化された^<13>C置換BEDT-TTFを手にいれることができた。またいままでは、BEDT-TTFの中心のC=C結合の両方のCを^<13>Cに置換していたのでPake分裂が起こりNMRの解析を困難にしていた。しかし、今回、合成した試料は、片側のCのみを^<13>Cに置換したもので、定量的なNMRの実験をするのを可能にしている。有機超伝導体は、酸化物と同様に二次元電子系なので、その異方性のため単結晶での研究が要求される。部分重水素化BEDT-TTFを用いたNMR用大型単結晶の作製もすすんでおり、現在、4〜5mgクラスの単結晶をえている。NMR測定も順調に進んでおり一部の成果については、国際学会で発表した。また、置換効果についても研究を行い重要な知見をえることができた。
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