強相関電子系物質、特に遷移金属酸化物や分子性導体などの特異な物性の発現機構の解明を目指して、理論的および計算物理学的研究を行った。特に1次元電子系については、密度行列繰り込み群の方法を用いて精密な計算を行った。得られた結果は次の通りである。 1.三角格子系ホランダイト化合物における電荷・軌道軌道秩序化の機構 バナジウム酸化物BixV8016の有効電子ハミルトニアンを導出し、基底状態の相図を求め、部分的スピン1重項形成という実験結果を説明することに成功した。 2.パイロキシン化合物における軌道秩序化とスピン1重項形成の機構 NaTiSi206の1次元構造の有効電子模型を導出し、密度行列繰り込み群の方法を用いて軌道秩序化とスピン1重項形成の理論を構築した。 3.電荷揺らぎの大きい系におけるスピン励起の特異性の解明 ゆっくりした電荷ゆらぎがある電子系のスピン励起の特異性を、スピン・擬スピン結合模型の量子モンテカルロ法による計算から明らかにし、スピン自由度が電荷自由度から有効的に分離することを示した。 4.銅酸化物二重鎖系の異常な電荷ダイナミクスの解明 電荷自由度にストライプ型の揺らぎが存在する系の光学伝導度スペクトルの異常について解明した。 5.銅酸化物二重鎖系の電荷秩序の融解とスピンギャップ流体の形成 電荷秩序が量子揺らぎによって融解した系がスピンギャップのある流体となる可能性を提案した。 6.1次元拡張ハバード模型の精密な電子相図の作成 密度行列繰り込み群の方法によりこの模型の朝永ラッティンジャー流体パラメータの精密な評価を行った。 7.1次元ジグザグ格子ハバード模型におけるスピン三重項超伝導の新規な発現機構の提案 リング交換機構によるスピン三重項超伝導の新しい発現機構を提案した。
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