平成14年度から進めていた重い電子系の超伝導体115系にたいする理論的研究の成果をまとめいくつかの論文にして発表した。すなわち相対論的バンド計算によりCeTIn_5(T=Ir and Co)、PuCoGa_5およびNpCoGa_5の電子構造を明らかにし、Ce115系とPu115系の間に存在する類似性を指摘した。また、j-j結合スキームにもとづく軌道縮退のある多体電子モデルを構築し、その軌道、スピン、電荷揺らぎの特徴を調べ、多体効果に基づく揺らぎによる超伝導の可能性を、RPA近似およびFLEX近似を用いて調べた。その結果軌道分裂の度合いがスピン揺らぎの成長をコントロールして反強磁性から超伝導への量子相転移を支配するパラメータになっている可能性があることが明らかになった。 パイロクロア格子系で重い電子系的振る舞いを示す物質として知られているLiV_2O_4について、軌道縮退のある多体電子モデルを構築し、スピン、軌道揺らぎに加え、スピンと軌道が結合した自由度の揺らぎが質量増強に重要な役割を果たしていることを明らかにした。この成果についても論文としてまとめ公刊した。 本年度から本格的に展開している研究テーマとしては、強磁性金属相における超伝導として注目を浴びているUGe_2がある。この系に対し軌道縮退のある多体電子モデルを構築し、多様な強磁性金属相についての理論的考察を開始している。
|