重い電子系では4極子秩序などの軌道縮退に伴う秩序状態および軌道自由度に関連したゆらぎが近年脚光を浴びているが、今年度はそれに関連して以下の3つのトピックに関して研究を進めた。 1)充填型スクッテルダイトのうちプラセオジミウムを含む系では金属絶縁体転移が見出されている。プラセオジミウムイオンではf電子は2個と考えられるが、その基底状態の縮退を解く様なひずみの発生にともなって金属絶縁体転移が生じる可能性について議論した。 2)最近いわゆる115と呼ばれる構造を持ったCe化合物において反強磁性と超伝導の競合・共存が見られることが発見され興味を集めている。 希土類金属のみではなく、Puなどのアクチニド元素の115系でも超伝導が発見され話題となっている。115系にたいするミクロなモデルとして軌道縮退を考慮したハバード型の模型を構築し、磁性と超伝導に対する軌道縮退の影響について考察し、軌道縮退によってコントロールされるスピンゆらぎによる超伝導という観点を提唱した。 3)UGe2は常圧下では強磁性金属である。圧力を加えると強磁性モーメントの大きさが変化し、強磁性相内部での1次転移近傍で超伝導が発見された。 この特異な現象を理解するため、jj結合スキームでUGe2に対するモデルを構成し、可能な強磁性相を調べた。モーメントのことなる強磁性金属相が可能であることが明らかになったが、それらの間には、一般には、強磁性モーメントと平行ないし垂直なSDW成分を伴う相が存在することがわかった。
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