昨年度に続きUGe_2について、j-j結合のスキームで理論研究を行なった。すなわち、5f軌道がスピン軌道相互作用によって分裂し6重縮退したj=5/2の軌道が各ウランサイトにあるとして、UGe_2の結晶構造を考慮した拡張ハバード模型を考える。このモデルで一様強磁性金属相の間の一次相転移が可能であることを示し、その相転移が可能なパラメーター領域の探索を行なった。 今年度は当研究課題の最終年度であるので、これまでの研究成果のとりまとめを行なった。主な成果として次の諸点をあげることが出来る。 (1)Ce115系を対象として、軌道縮退を考慮した有効ハミルトニアンを構築しその磁気的性質および超伝導の性質を理論的に調べた。超伝導が発見されたPuCoGa_5の電子状態の特徴を明らかにした。 (2)重い電子系的振る舞いが報告されている遷移金属化合物であるLiV_2O_4の大きな有効質量の起源として、パイロクロア格子上のt_2g軌道の拡張ハバード模型を考察し、そのスピンゆらぎ、軌道ゆらぎおよびスピン軌道が結合したゆらぎの性質を明らかにした。 (3)UGe_2の超伝導の起源に関連し、軌道縮退を考慮した有効ハミルトニアンを構築し、一様強磁性金属相の間の一次相転移の可能性について理論的考察を行なった。こうした相転移は単一バンドモデルでは極めて困難であるが、軌道縮退のある系では実際に可能であることが明らかになった。
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