巨大磁気抵抗を示すMn酸化物の発現機構を解明するために、電荷秩序・軌道秩序等を中性子散乱実験により研究している。これまでの我々の研究で見いだされた擬ストライプ秩序と、従来から知られていた市松模様型のCE電荷・軌道秩序、あるいはNi酸化物や高温超伝導銅酸化物で観測されるストライプ秩序との関連を明らかにするために、様々なMn酸化物あるいはNi酸化物試料で中性子散乱実験を行っている。平成14年度は、2つの成果が得られた。一つは、Mn酸化物におけるもので、(A_<1-x>B_x)MnO_3型ペロブスカイト構造のAイオンとBイオンがこれまでの試料では、ランダムに配置されていたが、x=0.5の試料においてAイオンとBイオンを層状に交互に積層させることにより、ランダムネスの影響を排除した試料で、巨大磁気抵抗の発現と電荷・軌道秩序の関連を調べることに成功した。我々の実験結果によれば、ランダムネスの排除された試料では、CE型電荷秩序がこれまで知られていた出現温度より遙かに高温で形成されることが明らかにされた。 また、Ni酸化物の研究においても興味深い2種類の電荷秩序の競合を観測することができた。x=0.5の試料では、ストライプ秩序に先立って非常に高温で市松模様型の電荷秩序が形成されるが、スピン相関の発達に伴い次第に市松模様型電荷秩序がストライプ秩序によって置き換えられるばかりか、x=0.5を大きく超える濃度までホール置換を行ってもストライプ秩序が低温で形成される。また、Ni酸化物における絶縁体・金属転移は、ストライプ秩序と直接の関係はなく、市松模様型電荷秩序からの入れ替わりとして生じていることが明らかにされた。
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